レプトスピラ症

レプトスピラは、人畜共通感染症(Zoonosis:ズーノーシス)です。
※人畜共通感染症は、人獣共通感染症、動物由来感染症とも言います。

◎レプトスピラの病原体

レプトスピラ(Leptospira)の病原体は、スピロヘータ目レプトスピラ科に属するグラム陰性細菌です。
レプトスピラには、病原性のものと非病原性のものがあり、250以上の血清型に分かれています。

レプトスピラは、らせん状の細菌(直径0.1μm、長さ6~20μm)で、両端またはどちらか一端がフック状に曲がっています。

レプトスピラは、微好気から好気的環境(生育のための酸素が十分ある環境のこと)で生育します。弱アルカリ性から中性の淡水中、または湿った土壌の中で数ヶ月間生存することができます。

<レプトスピラの血清型>

  • イクテロヘモロジー型(icterohaemorrhagiae)
    ※別名:黄疸出血性レプトスピラ, ワイル病レプトスピラ
  • カニコーラ型(canicola)
    ※別名:イヌレプトスピラ
  • ヘブドマティス型(hebdomadis)
    ※別名:なぬかやみレプトスピラ; 7日熱レプトスピラ
  • コペンハーゲニー型(copenhageni)
  • オータムナリス型(autumnalis)
    ※別名:秋疫レプトスピラ
  • オーストラリス型(australis)
    ※別名:秋疫Cレプトスピラ

◎レプトスピラの感染経路

レプトスピラを保菌している動物の尿、または保菌動物の尿に感染した土壌や水に接触することで、感染(接触感染、経皮感染)します。また、汚染された水や食物を舐めたり、食べたりすることでも感染(経口感染)します。
※保菌動物には、げっ歯類(ねずみなど)、野生動物、家畜(牛、馬、豚など)やペット(犬、猫など)があります。

かつての感染例は、農業従事者に多く見られましたが、現在では山や湖でアウトドアを楽しむ一般の方も感染することがあるようです。

◎レプトスピラの症状

<犬の症状>

レプトスピラに感染した場合でも、特に症状が現れずに自然治癒してしまうケースもあります(不顕性型と言います)。
不顕性型の場合でも、尿に長期間レプトスピラ菌が排泄されますので、他の動物(人、犬、猫などを含む)から隔離します。

犬の症状の代表的なものに、出血型と黄疸型とがあります。

◎出血型
出血型の症状は、レプトスピラ・カニコーラ型(イヌレプトスピラ)に感染した場合に現れます。
このタイプの症状には、次のようなものがあります。

  • 発熱(40℃前後)
  • 食欲不振
  • 結膜の充血
  • 嘔吐
  • 血便
  • 脱水 ※末期症状
  • 尿毒症 ※末期症状

※末期症状が現れると、高い確率で死亡します。

◎黄疸型
黄疸型の症状は、レプトスピラ・イクテロヘモロジー型(黄疸出血性レプトスピラ)に感染した場合に現れます。
このタイプの症状には、次のようなものがあります。

  • 黄疸
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 出血(口の粘膜)

※このタイプは出血型よりも重症化するケースが多く、発病後、数時間~数日で死亡することもあります。

<人の症状>

人の潜伏期間は、3日~14日程度です。
症状には、軽症型と重症型(ワイル病)とがあります。

初期の症状としては、次のようなものがあります。

  • 悪寒
  • 発熱
  • 頭痛
  • 全身の倦怠感
  • 眼球結膜の充血
  • 筋肉痛
  • 腰痛
  • 急性熱性疾患

軽症型の場合は、風邪のような症状のみで回復に向かいます。

重症型(ワイル病)の場合、次のような症状が現れます。

  • 黄疸
  • 出欠(点状出血、全身出血)
  • 肝脾腫
  • 肝臓障害
  • 腎臓障害
  • 播種性血管内凝固症候群

※重症型の死亡率:5~50%

◎レプトスピラの治療

軽度~中度の症状の場合には、テトラサイクリン系のドキシサイクリンという抗生物質を投与します。
重度の症状の際は、ペニシリン系の抗生物質による治療が行われます。
ただし、ペニシリンを投与した場合には、ショック症状を引き起こす可能性がありますので、注意が必要です。

◎レプトスピラの予防

レプトスピラ症の予防には、ワクチン接種またはドキシサイクリンによる薬物予防が有効です。

レプトスピラ症の流行が7月~10月頃に集中していますので、この時期にワクチン接種することが効果的です。
なお、レプトスピラ症の流行地域では、不用意に水に入らないようにすることで予防できます。
特に洪水の後には、絶対に水へ入らないようにすることが重要です。