犬パルボウイルス感染症

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犬パルボウイルス感染症は、強い感染力を持つパルボウイルスに感染することで、さまざまな症状を引き起こし、死に至ることもある大変恐ろしい病気です。

この感染症は、1976年に突然現れて数年のうちに全世界に爆発的に広まりました。
当初は、子犬が突然死亡する原因不明の病気でしたので、「ポックリ病」「コロリ病」と呼ばれておりました。

◎犬パルボウイルス感染症の病原体

犬パルボウイルス感染症は、パルボウイルス亜科(Parvovirinae)のパルボウイルス属(Parvovirus)犬パルボウイルス(Canine Parvovirus)が病原体です。
犬パルボウイルスは、直径20nmと自然界に存在するウイルスの中でも最小の部類に入ります。この為、ラテン語の「小さい」と意味する「parvus」から命名されました。

ウイルスの構造などは、犬パルボウイルスが出現する以前から存在していた猫パルボウイルスと同じですが、宿主が異なります。
この為、猫パルボウイルスが突然変異して現れたウイルスであると考えられております。
このウイルスは、イヌ科との関連性が強く、イヌ科以外の動物には感染しません。
例えば、犬パルボウイルスは、犬、オオカミ、キツネなどに感染しますが、猫や人間などには感染しません。

◎犬パルボウイルス感染症の感染経路

犬パルボウイルス感染症は、次のような経路で感染します。

接触感染
  • 犬パルボウイルスに感染している犬に接触することで感染します
  • 犬パルボウイルスに感染している犬のお世話をした人間が、未感染の犬に接触することで感染します
  • 犬パルボウイルスに感染している犬に接触した動物に、未感染の犬が接触することで感染します
経口感染
  • 犬パルボウイルスに感染している犬の排泄物を食べたり、舐めることで感染します
空気感染
  • 犬パルボウイルスに感染している犬の排泄物の飛沫や粉じんを吸い込むことで感染します

◎犬パルボウイルス感染症の症状

犬パルボウイルス感染症の症状には、生後3週齢~生後9週齢程度の子犬がかかりやすい【心筋炎型】と、離乳期以降の子犬や成犬がかかりやすい【腸炎型】の2つのパターンがあります。
また、犬パルボウイルスが骨髄に達すると、白血球が激減して敗血症を引き起こします。
敗血症に陥ると、ショック症状や多臓器不全などにより死に至ります。

犬パルボウイルスの潜伏期間は、通常2日~12日程度です。

【心筋炎型】

心筋炎型は、健康そうな子犬がいきなり虚脱や呼吸困難に陥り突然死するパターンです。
このパターンは、犬パルボウイルスにより心筋細胞が破壊されることで心不全が引き起こされます。

【腸炎型】

腸炎型は、犬パルボウイルスにより腸の細胞が破壊されることにより、嘔吐や下痢、発熱や脱水の症状が表れるパターンです。
重症化すると、粘液性の血便(トマトジュース状で悪臭を伴う)が見られるようになり、重度の脱水症状に陥ります。

◎犬パルボウイルス感染症の治療

残念ながら、犬パルボウイルスに対して有効な特効薬はありません。
そのため、犬パルボウイルス感染症の治療は、各症状を緩和する対処療法や、弱った体力や免疫力を高める手助けをする治療が行われます。

例えば、次のような治療が行われます。

  • 嘔吐に対しては、絶食や絶水を行います。
  • 脱水症状が見られる場合には、点滴を行って水分や電解質を補います。
  • 痛みがひどい場合には、鎮痛剤で痛みを和らげます。
  • 免疫力が低下することで二次感染を予防する意味で抗生物質の投与が行われます。
  • 低下した免疫力を回復させるために、インターフェロンの投与を行います。

◎犬パルボウイルス感染症の予防

犬パルボウイルス感染症には、定期的なワクチン接種(子犬は2回~3回、成犬は年1回)が有効です。

犬パルボウイルスは、そのままの状態で6ヶ月から1年程度は感染力を維持することができます。
感染した犬が発見された場合には、感染した犬を隔離して、飼育環境を徹底的に消毒する必要があります。

通常使用される消毒薬(アルコールやクレゾール、逆性せっけんなど)では効果がありません。
犬パルボウイルスの消毒を行う場合には、次亜塩素酸ナトリウム(5%)を使用します。


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