ペット産業における国内の流通販売の実情

日本の間違った子犬・子猫販売から生じるさまざまな問題

インターネット上の掲示板や、お散歩中に出会った飼い主さんなどから次のような問題聞いたり目にすることがあります。

  • 買ったばかりの子犬が伝染病にかかったの。
  • 他の犬を見かけると、吠えてしまい、困っているの。
  • 他の犬を怖がり、一緒に遊ぶことができないの。
  • 1歳になる愛猫が人に対して攻撃的で、お客さんを呼べないの。

このような問題は、日本の間違った子犬・子猫販売が原因で発生している可能性が高いと言えるでしょう。

ここでは、現在の日本の子犬・子猫販売の抱える問題を具体的に見ていこうと思います。

子犬・子猫の流通経路を知ろう!

現在、子犬や子猫はブリーダーさんが繁殖をおこない、さまざまな経路をだどって販売されています。
販売経路を分類すると、以下のように分類することができます。

  1. 店舗を構えるペットショップを通じて展示販売
    ※ブリーダーさんはペット市場(ペットオークション)に出品し、ペットショップは落札業者から仕入れます
  2. 仲介業者を通じてブリーダーの子犬を販売
  3. ブリーダーが直接販売

日本国内で最も多いのは、1番のケース(店舗を構えるペットショップを通じて展示販売)です。
このケースでは、ペット市場(オークション)から仕入れた子犬や子猫を店頭に展示して販売します。

<ペット市場(オークション)とは>

ペット市場(オークション)では、生後30日~生後45日ころの子犬や子猫が出品されています。出品された子犬や子猫は、乱雑に扱われ、機械的に、流れ作業で落札されていきます。落札される金額は、品種、性別、毛色、体の大きさ、生年月日、季節などで相場が決定され、中にはびっくりするような金額で落札されてしまいます。(場合によっては、生体価格より出品経費などのほうが上回るケースもあるようです。)

このように扱われる子犬・子猫の質は、どうでしょうか?
出品した子犬や子猫の評価(落札額など)が低いとと、誰しもやる気を失ってしまい、乱繁殖、質の低下を招いてしまっています。

<落札後~店頭に展示されるまで>

では、落札された子犬や子猫はその後どのように扱われるのでしょうか?

子犬や子猫を仕入れた段階では、感染症に感染しているかどうかは潜伏期間があるため、判りません。
そのため、ペットショップの多くは、仕入れた子犬や子猫を10日~14日ほど隔離します。
感染症の潜伏期間が終わり、安全が確認された後、店頭に展示するようにしています。
ただ、仕入れた子犬や子猫が感染していたら、他の子犬や子猫も感染する可能性が高くなってしまいますし、複数のブリーダーさんの子犬や子猫を仕入れておりますので、感染している子犬や子猫が紛れ込む可能性が高くなります。
その上、「社会化期を無視して親犬から無理やり引き離され」、「狭いショーケースに閉じ込められ」、「入れ替わり立ち替わり複数の人の見世物にされている」ため、過大なストレスが蓄積されていきます。

ただでさえ、免疫力の弱い子犬にとって、ストレスが蓄積されると免疫力が低下して、感染症の発症確率を高める引き金となっている訳です。

<社会化期とは>

社会化期とは、 生後3週齢~12週齢(21日~84日)ころのことで、親兄弟姉妹との遊びやしつけの中から、犬社会や猫社会を学習し、ブリーダーさんなどの人間から人社会を学習する重要な時期です。
この時期に学習が十分な子は、他の犬猫や動物、人間と上手に付き合う能力が養われており、しつけの入りやすい良い子に育ちます。
反対に、早くから親兄弟姉妹と無理やり引き離され、人との接触が少ない子は、学習が不十分となり、「問題行動」が増加する傾向にあります。

社会化の学習が不十分な子が販売される原因は、販売者側の都合を優先した結果なのですが・・・

<ペットショップに展示されている子犬や子猫を購入する場合の注意点>

ペットショップに展示されている子犬や子猫を購入する場合には、店員さんに以下の点についてさりげなく質問してみてください。

  • 親犬から引き離された時期
  • 展示を開始した時期
  • 親犬の情報(毛色、体の大きさ、性格)

まず、「親犬から引き離された時期」を聞くことで、社会化期の学習が十分かどうかが判ります。少なくても8週齢(生後56日)までは親犬と一緒に生活させてあげて欲しいと思います。

次に、「展示を開始した時期」を聞くことで、感染症の潜伏期間が終了しているかどうかを知ることができます(「親犬から引き離された時期」と「展示を開始した時期」から推測できます)。

最後に、「親犬の情報(毛色、体の大きさ、性格など)」を聞く理由は、子犬は親犬の特徴を引き継ぎますので、成熟時の状態をある程度推測することが可能です。

最近では、インターネットの普及により、2番(仲介業者を通じてのブリーダーの子犬を販売)や3番(ブリーダーが直接販売)のケースも増えてきております。2番と3番は似ていますが、販売元が異なります。
ただ、このケースでも、ブリーダーさんや、仲介業者の質を見極める必要があります。
信頼できるブリーダーさんや仲介業者に行きつくまで、じっくりと探す必要がある訳です。

日本で生後間もない子犬や子猫が販売される理由

欧米では、生後60日(子犬・子猫を母親から引き離す時期です)を経過した子犬や子猫を販売するのが一般的ですが、日本では生後間もない子犬や子猫が販売されております。

この理由の1つ目は、ブリーダーさんが所有する「土地の広さ」だといわれております。
生まれた子供と母親を管理するためには、繁殖スペースが必要になります。
狭い日本では繁殖スペースが十分に確保できないケースも多く、ところてん状態で販売していくこととなります。
また、生体1頭当たりの利益が薄く、次から次へと出産を行わないと職業として成り立たない現実もあります。

二つ目は、販売者側の都合だと思います。
子犬や子猫の最も可愛い時期が生後45日前後であり、その頃の子を求める需要にも問題があります。
また、その頃に販売したほうが、高い価格で売れることもあります。
もし、自分だけが、生後3ヶ月齢経過後でないと販売しないとしたら競争の原理から、売れ残ってしまうかもしれません。

特に大型犬は生後60日を経過したころから、あっという間に大きくなってしまいます。
大型犬種がペットショップに展示されていない理由は、広い展示スペースが必要となる為です。