ペット産業の流通における犬猫の死亡数について考える

先日、Yahoo!ニュースに「犬猫2万匹、流通過程で死ぬ 国内流通で初の実数判明」(朝日新聞デジタル)の記事が掲載されていました。

記事によると、「2014年度に国内で販売されるなどして流通した犬猫の数は約75万匹で、その約3%にあたる2万3千匹余りが流通過程で死んでいたことが、朝日新聞とAERAの調査でわかった。」(朝日新聞デジタルより引用)という内容です。
この数字は、2013年9月に施行された改正動物愛護管理法(動物の愛護及び管理に関する法律)で、犬猫販売業者に所有した生体数、引渡した生体数、死亡した生体数を記載した報告書の提出が義務付けられ、その数字を集計したものとされています。

では、この数字(死亡数)から、何が分かるのでしょうか?

一言で「死亡数:2万3千匹余」と書いてあると、犬猫販売業者全体が犬猫の生体(子犬や子猫、親犬や親猫、成犬や成猫、繁殖を引退した老犬・老猫など)を大量に殺しているように感じられますが、ここで重要なことは「どのような理由で死亡したのか?」ということです。

もともと、犬や猫という動物は多産型の動物です。
このため、どんなに優秀なブリーダーであっても、子犬・子猫の死産や、産後にうまく育つことができずに1週間程度で死亡する仔がどうしても出てきてしまうのです。(生後7日齢までの子犬は、死亡率が高く、「1週間の壁」と言われています)
自然界の野生動物でも、このような死はごく自然なことであり、異常なものではありません。

ですが、問題になるのは上記の死亡数には、防ぐことの出来ない自然死の他に、本来防ぐことの出来る死も隠れているということです。

例えば、知識の無い繁殖業者(パピーミルなど)が無計画に繁殖することで、奇形な生体や、虚弱な仔が産まれてきます。
この様な仔の多くは、うまく育つことができずに産まれて間もなく死亡してしまいます。

また、日本人に人気の極小サイズや、超極小サイズの仔も上記死亡数を引き上げる原因だと考えられます。
人の手で無理やり小さくなるように作られた極小サイズや、超極小サイズの仔の多くは先天的に心臓や内臓疾患を抱えて産まれてきます。
その多くは産まれて間もなく死亡したり、仮に生き残り店頭に陳列され販売されたとしても、短命に終わります。

あと、繁殖に使用できない犬・猫(受胎率が悪い、精子が薄いなど)や、繁殖を引退した老犬・老猫は、繁殖業者にとってエサ代や飼育スペースなどが負担であり、悪質な業者は意図的に死亡するように仕向ける(ネグレスト、薬殺、殺処分など)ことが予想されます。

そして、日本のペット産業独特の子犬・子猫の展示陳列販売が死亡原因として最も大きな要因(例えば下記)だとわたくしは考えています。

  • 不特定多数の繁殖者から集められた子犬・子猫は、感染症のリスクが増大します。
  • 狭いショーケースに閉じ込められ、強いスポットライトや、騒音、人の見世物にされ、日に何回も接客(抱っこ商法など)させられるなど、大きなストレスを抱えています。
  • 展示陳列販売の衝動買いを誘う、生後45日~60日頃にショーケースに閉じ込められたストレスにより、未熟で体力の無い子犬・子猫の感染症に対するリスクが増大します。
  • 未熟な子犬・子猫の展示陳列販売は、動物虐待だと考えます。

日本では、ペット産業先進国の欧米で行われていない子犬・子猫の展示陳列販売をいまだに継続しています。
そればかりか、改正した動物愛護管理法でこの展示陳列販売を推進しています。

また、先述の「本来防ぐことの出来る死」の多くは、ペット市場(生体オークション)を中心とする日本独自の子犬・子猫の流通体制が大きな要因であることも見逃すことが出来ません。
ペット市場(生体オークション)は、手離れのよく、クレームの無い為、無責任な繁殖者にとってとても都合の良い仕組みです。
ペット市場(生体オークション)では、生体が流れ作業で出品され、見た目で問題なければ次々と落札されていきます。
消費者からの要求の多い、極小サイズや超極小サイズの生体には、高値がつき、繁殖数が多い犬種や毛色の生体は安価で取引されます。
落札者にはノークレーム、ノーリターンという暗黙のルールが存在していますので、落札後に感染症が発症したり、先天性異常が発見されることも少なくはないようです。
もし、落札した生体に何らかの問題が発生した場合、どうするのでしょうか?
安価で落札された生体の場合、高額な治療費を支払うことは考えられません。

<最後に>

日本のペット産業には、多くの問題が存在していますが、消費者の方にもっと勉強していただき、子犬・子猫はどこから手に入れるのか?

ライフスタイルによっては、子犬・子猫に固執せず、保健所(動物愛護センター)に収容されている犬・猫や、優良なブリーダーが適切に繁殖に使用していた繁殖引退犬などを検討していただきたいと思います。

例えば、高齢者の方が既存の犬・猫を亡くして、年齢的に次の子犬・子猫は責任が取れないような場合、優良ブリーダーによる繁殖引退犬をご検討いただけるのではないでしょうか?

保健所の収容動物の場合、人に虐待された経験があると人に懐くことができずに飼育が難しい場合があると思いますが、犬・猫の飼育経験があり、知識の豊富な方の場合、積極的に保健所の収容動物をご検討いただきたいと思います。
事実、アメリカでは、ドッグアドプションと呼ばれる里親探しを積極的に行っているそうです。
※ドッグアドプション(Dog Adoption)とは、犬の養子縁組のことです