犬ジステンバーは、犬の代表的な伝染病で、日本国内でも周期的に発生している感染率および死亡率の非常に高い病気です。
◎犬ジステンバーの病原体
犬ジステンバーは、パラミクソウイルス科(Family Paramyxoviridae)のモルビリウイルス属(Genus Morbillivirus)、犬ジステンパー(CDV:Canine distemper Virus)が病原体です。
犬をはじめとしたネコ目(食肉目)の感染症で、日本オオカミが絶滅した原因だといわれております。
◎犬ジステンバーの感染経路
犬ジステンバーは、次のような経路で感染します。
- 犬ジステンバーに感染した犬の排泄物中に含まれるウイルスが空中に飛散することによる空気感染
- 犬ジステンバーに感染した犬の排泄物中に含まれるウイルスを食べることによる経口感染
- 犬ジステンバーに感染した犬の咳やくしゃみによる飛沫感染および接触感染
特に寒くて乾燥している冬期は、感染力が強まります。
次の条件で感染力を維持しますので、注意が必要です。
温度 | 期間 |
-10℃ | 6ヶ月以上 |
4℃ | 7週間~8週間 |
20℃~25℃ | 7日間~8日間 |
◎犬ジステンバーの症状
犬ジステンバーウイルスに感染すると、3日~5日の潜伏期間を経て、発熱の症状が表れます。この時、リンパ系組織でウイルスが増殖し、白血球数が低下します。
この発熱は、比較的短期間で収束しますが、数日後に第二期の発熱が始まります。
第二期の発熱は、収束するまでに1週間程度かかります。
※このような発熱パターンは二峰性発熱と呼ばれており、犬ジステンパーの特徴の一つでもあります
ウイルスが全身にまわると、下記症状一覧表の眼、消化器系、呼吸器系、皮膚の症状が表れます。
この時、細菌感染を伴うと、病気が重症化します。
症状が進行して、末期状態になるとウイルスが神経系および脳にまで達して、下記症状一覧表の神経系症状を引き起こします。
ここまで病気が進行すると、90%の非常に高い確率で死に至ります。
成犬になってから犬ジステンバーウイルスに感染して、発症すると、発熱などの初期症状が出ずに痙攣などの神経系症状のみが表れることがあります。
この場合、突発性てんかんとと間違いやすいので、注意が必要です。
症状 | |
一般的な症状 |
|
眼の症状 |
|
消化器系症状 |
|
呼吸器系症状 |
|
皮膚の症状 |
|
神経系症状 |
|
◎犬ジステンバーの治療
犬ジステンバーは、早期治療が重要です。
細菌の二次感染を予防するために抗生物質などの投与を行います。さらに、各症状に対して対処療法(輸液、栄養補給、水分補給など)を行います。
治療中は、安静にさせることで、体力の回復をはかります。